新橋の立ち飲み店「竜馬」「以蔵」「ORYO」(港区新橋2)を経営するR-sense(港区)は12月19日、忘年会の会場(品川区)で常連客らと自主制作した短編映画3本を上映した。
上映したのは、「新橋にほえろ4」「新橋世紀アイロンゲリオン」「モイケル・ジャクソン~酔(すい)ラー」の3作品。総合プロデューサーは同社社長の砂押資さんで、シナリオ・監督・撮影・キャストは全て同社経営の立ち飲み店の常連客が務めた。
同社による映像制作企画は今年で4年目。「もう年末の恒例行事になっている。紅白みたいなもの」(砂押さん)という。きっかけは、常連客との会話。砂押さんがもともと映像好きだったため、「それが高じて製作してしまった」。昨年10月に同社が発足させたローカル映像相互広告「新橋ハート」も、この映画製作で得た技術を生かし企画したもの。
シリーズ4本目となった「新橋にほえろ」は今回、千葉県館山市までロケハンを決行。「10月ごろから週末を利用して撮影を重ねた。4回目の今年はみんな演技も上達したようだ」と砂押さん。劇中、窓ガラスに体当たりして飛び込むシーンには、10万円のあめ細工製のガラスを使用。ロケ費用、出演者の弁当代、衣装や小道具などで総製作費は50万円に及んだ。
「新橋世紀アイロンゲリオン」はコスプレ好きの50代の常連客によるもので、人気ロボットアニメのパロディー。「酔ラー」は故マイケル・ジャクソンさんの「スリラー」のパロディーで、主演は砂押さん自身。相手役の女性は、10年来の最古参常連客で自称「プロの飲み人」という埼玉県在住の主婦。両者とも俳優並みの迫真の演技で、会場の喝采(かっさい)を浴びた。
「酔ラー」は本格的な振り付けを導入。毎週土曜の夜中にダンスの練習を重ねたという。振り付けは、ダンスをたしなむ常連客の女性が手掛けた。深夜に行ったロケ現場はSL広場や日比谷口~烏森口間の公道。撮影許可も取ったという。ソンビならぬ泥酔者が、酒瓶片手に路地裏からぞろぞろとSL広場に集まるシーンも見どころ。
今回出演したという客の1人(40代)は「こんな年齢になってダンスを練習するとは思わなかった。部活のようで楽しい」と話す。「お客さんに参加してもらうことで、コミュニケーションが生まれる。店に寄ってくれるようになるし、他店との横のつながりができることによって、お客さんが動く」と砂押さん。「僕自身も楽しんでやっている。そうでなければ成立しない。新作の構想もすでにある」とも。
編集は映像関係の仕事をする常連客。「新橋ハート」に参加する飲食店の経営者やスタッフも友情出演する。今後これら3本の映画は、肖像権などに留意しながら主に「以蔵」で不定期に上映する予定。