創業140年の米穀店、西新橋へ移転-跡地に飲食店か

80年以上新橋の変遷を見守ってきた山路商店の旧店舗(写真=清原逸夫)

80年以上新橋の変遷を見守ってきた山路商店の旧店舗(写真=清原逸夫)

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 新橋1丁目の米穀店「山路商店」(TEL 03-6206-1810)が10月5日、旧店舗売却のため西新橋の仮店舗(港区西新橋1)に移転した。新店舗は2010年6月以降に完成の予定。

旧店舗と最後の記念撮影

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 同店は明治元年創業の老舗。一般小売りのほか、近隣の飲食店や企業の社員食堂などと長年取引を行ってきた。代表の伴野武さん(80)は4代目。妻の恵美子さん(73)、長男で5代目の正武さん(39)とともに店を切り盛りする。今回の移転は遺産相続に絡む店舗売却のため。

 風情あふれる木造2階建ての住居兼店舗は築82年。初代の店舗は関東大震災で焼失し、昭和2(1927)年に現存のものに建て直した。第二次世界大戦の際の空襲でも被害を受けず、これまで残った。被写体としても人気を博し、雑誌にも紹介されたという。

 同店の向かいで80年以上続く薬局「芝口薬局」(新橋1)を営む舟木さん夫婦は「寂しくなる」と悲しむ。舟木さんはかつて店先でニワトリを飼っていた。そのニワトリたちが道路を横断して山路商店の内外にこぼれる米を食べに来ていたという。「『ニワトリ事件』としてこの辺りでは有名だった(笑)」と伴野さんは振り返る。

 「昔はこの周辺にも20数軒は米屋があった。食が多様化し、価格競争も激しく、今は5~6軒しか残っていない」と伴野さん。そうした中、正武さんの長男(10)も6代目を志す意思があるという。新たな土地で再び歴史が紡がれることに、伴野さん夫婦は目を細める。

 伴野さんは信州の出身。戦後、伯父であり子どものいなかった先代の故・山路秋次さんの元で暮らした。水産大学卒業後、当時華やかだった捕鯨船に乗っていたが、店を継ぐため下船。以来、60年近く同店を守ってきた。しかし、正式な養子縁組は行っておらず、3代目亡き後、関係者の意向で土地は売却となった。

 伴野さんも正武さんも人生の大半を旧店舗で過ごし、大きな引っ越しはこれが初めて。膨大な所持品からは、先代の貴重な遺品や、創業当時からの古い「お宝」も数多く出てきたという。新店舗は虎ノ門に近い場所。敷地面積は17坪、鉄骨造の4階建て、1階が店舗、2階以上が住居となる構想。

 旧店舗の明け渡しは10月9日。今後は建物をそのまま使用した飲食店となる見込み。

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