日比谷神社の神様、汐留の新社殿に通算3度目の引っ越し

汐留シオサイト内に建てられた新しい神殿に遷座される御神霊(中央白い布)。「新居」の居心地はいかばかりか

汐留シオサイト内に建てられた新しい神殿に遷座される御神霊(中央白い布)。「新居」の居心地はいかばかりか

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 日比谷神社(港区新橋4)で7月31日、環状2号建設工事に伴う新社殿への御神霊(おみたま)の転居「遷座祭」が行われた。夕暮れから始まった同祭儀には氏子を中心とした数百人の人々が集まり、セミしぐれの中、御神霊とともに200メートルほど先の「新居」へと練り歩いた。

解体される旧社殿と伐採の運命をたどる古木

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 東京都が用意した土地に建つ新社殿は東新橋1丁目で、第1京浜沿いの汐留シオサイト内。後方には共同通信社や汐留メディアタワーのビルそびえ、社殿横にはJRの列車が行き交う。昨年秋から工事が始まり、7月に完成したばかり。「住み心地は今のところわからない」と同社禰宜の三宅さん。

 旧社殿の周囲はすでに立ち退きが進み、殺伐とした風景が広がる。都会のオアシスだった同社の庭には小さいながらも緑が多く、大きな木々には伐採を知らないたくさんのセミが例年通り鳴き続けていた。当日は別れを旧社殿に惜しむよう、お札を買い求めに来る人や鳥居の前で記念写真を撮影する人などの姿も見られた。

 同祭儀には烏森神社(新橋2)をはじめとした港区内の神社から26人の神職者と日比谷神社の氏子総代ら約30人が参加。神職者は白い斎服、氏子は裃(かみしも)を身に着け、しめやかに祭儀が始まった。6時半ごろ、旧社殿のちょうちんが点灯。御神体に移転をお願いする「奉戴(ほうたい)の儀奉」に続き、祝詞や雅楽とともに白い布で覆われた「お御霊」が公に登場した。

 「お御霊」はちょうちんと旗を先頭に、白い布を敷いた道をゆっくりと歩んだ。警察による交通規制が行われたが、交通量の多い第1京浜では歩行者と同じく信号待ちする場面も。19時には無事神殿内に遷座が完了した。

 同神社の移転は江戸時代から通算3度目。創立年不明の同社は旧麹町日比谷公園に「日比谷稲荷明神旅泊稲荷明神」として鎮座していたが、江戸城日比谷御門建設を受け、氏子共々新橋へと移転させられた。1923(大正12)年には関東大震災の被害に遭い、再建設。1928(昭和3)年には都市計画区割整理のため愛宕に換地。その後同地へのJR敷設により1957(昭和32)年、新橋4丁目にこれまでの社殿が造営された。

 別名「鯖稲荷」としても知られる同社は、全国でも例のない虫歯封じの神社。虫歯封じ祈願のためサバを絶ち、痛みが治まるなど成就したらサバを奉納する習慣があったという。「鯖稲荷」の由来は、日比谷に鎮座していた当時旅人に開放し無病息災を祈願する「旅泊(さば)稲荷」として親しまれていたことによる。新橋へ移転してからはなぜか魚のサバになった。「海が近く、サバがよく揚がった」などの説があるが、詳細は不明。現在では、「虫歯祈とうに訪れたりサバを奉納したりする人はごくわずか」(三宅さん)。

 港区内の神社移転による御神霊の「引っ越し」は、平成に入ってから御穂・鹿島神社に続いて2社目。新社殿建設移転費用は3億5千万円に上る。旧社殿は今後9月初旬にかけて解体される。

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