新橋のバー「千」(港区新橋4、TEL 03-3438-2359)の常連客が中心となって結成された吹奏楽バンド「新橋吹奏楽部」が、「こいち祭」で初の演奏を披露することが決定した。特設ステージの出場枠は狭く、そのハードルを越えての出場決定にメンバーの喜びもひとしおだ。
「当初から僕の頭には『こいち祭』の舞台で仲間と演奏する姿があった」と話すのは、経営コンサルタントのMAXこと森下雅夫さん。「こいち祭」は新橋商店街の振興を目的に愛宕・新橋地区の12ある商店街の連合会が主催するもので、今年で15回目を迎える新橋最大の夏祭り。目前に迫った本番に向け練習に熱が入る。
同吹奏楽部は、昨年6月に森下さんが立ち上げたもの。森下さんはこれまで楽器を触った経験がなかったが、ある日聴いたバンド演奏に感銘を受け、テナーサックスを購入。音楽教室に通いながら一人で「新橋吹奏楽部」を名乗るようになった。
間もなく、コルネット希望者が「入部」。飲み歩いている際に知り合ったプロサックス奏者から個人レッスンを受けるなど、思いは着実に形となっていく。森下さんが通う新橋のバー「千」のオーナー三方潔美さんが共感し、店を練習の場として提供してくれた。すると「店の常連客が『自分もやりたい』と次々入部するようになった」と振り返る。
その後、ピアノ演奏歴のある三方さんも、「きらきらしたサクソホンを見たら欲しくなって(笑)」楽器を購入し入部。現在、部長を務める。三方さんは昨年脱サラし、新橋に店を構えた元サラリーマン。「OA機器の営業をやっていた。仕事はきつく、その分、夜は遊んでいたので客の気持ちがよくわかる」(三方さん)。そんな三方さんを慕い、同店にはサラリーマンらが足を運ぶ。
現在部員は25人に増えた。練習日は毎週土曜の午後。練習場所は桜田公園(新橋3)の生涯学習センターなど。「場所が取れずに午前中になることもある。新橋の酔っぱらいがメンバーなので、そうなると辛い(笑)。遅刻しないことが最大の目標」と森下さん。
部員の内訳は男女ほぼ半々で、30代前半~50代の社会人。吹奏楽やバンド経験者は2割ほどで、大半は「全くの初心者」。中学高校などで吹奏楽部に在籍していた人が懐かしさで入部するケースも多い。「市民楽団などもあるが、レベルが高すぎる。経験者でも20年ぶりに楽器に触れる人はやりたくても躊躇(ちゅうちょ)してしまう。『新橋吹奏楽部』はすき間産業のようなもの」(森下さん)。
名称は「吹奏楽部」だが、演奏する楽曲は「何でもあり」。「こいち祭」での演奏曲目は「内緒」というが、現在のところジャズナンバーを中心に練習しているという。同祭りに出演するのは12~13人。楽器は、ソプラノサックス、アルトサックス、テナーサックス、トランペット、コルネット、アコースティックギター、ベース、パーカッションなど。入部希望者の見学も多いという。
「とにかく楽しいし、みんな熱くなっている。『新橋の酔っぱらいたちが何やら一生懸命練習している』という噂がたち、テレビ局から取材も来た(笑)」と森下さん。三方さんも「会社以外に打ち込める何かがあるのはいいこと」と話す。「今後は施設での演奏など人に喜んでもらえるようなことをしていきたい。新橋陸上部や政経塾、サルサ部など、他の大人の部活動も企画中」という。
演奏日時は23日14時20分~14時40分。場所はSL広場特設ステージ。