新橋の和菓子店「新正堂」(港区新橋4、TEL 03_3431_2512)の「切腹最中」が11月5日、フリーペーパー「メトロガイド」紙上の企画「東京うまいもの大賞」(日刊工業新聞社発行)で1位を獲得した。
同企画は、同社が任意で選んだ100店の中から東京で食べられる「うまいもの」を一般投票によってランキングするもの。「メトロガイド」の100号を記念して開催された。
1位に輝いた「切腹最中」の誕生は、同店が「忠臣蔵」の発端となった「浅野長矩切腹の場、田村邸」跡地内に店を構えていたことに由来する。現在は、マッカーサー道路こと環状2号線予定地だったため近隣に移転。同店の当時の人気商品は「豆大福」だったが日持ちしない。利用客から、「贈答品用に日持ちするものを」との要望が寄せられ3代目当主の渡辺社長が「最中」の発売を決めた。
「ただの最中ではなく、地に縁あるものを」と構想に2年半かけて「忠臣蔵」をテーマに1990年から「切腹最中」の販売を開始。店頭に商品を並べるまで「縁起が悪い」など家族から総反対を受け、男女合わせて120人にアンケートをとった結果1人だけの賛成しか得られなかったという。一時は販売をあきらめた渡辺社長だが、「あきらめきれず包装材料にお金をかけなければいいと思い、新橋の老舗『末げん』さんは三島由紀夫がハチマキを巻いて自害する前の晩に食事をしたエピソードが有名なことから構想を得て」(同)、現在「切腹最中」の中央に「はちまき」状態に巻いている紙を手作りで制作し、販売に踏み切った。
販売後も最中に挟んだあんこが重く、最中の口がしまってしまうので中に求肥を詰めるなど工夫を重ね、現在は1日1,000個をすべて手作りでまかなっている。店内は、「忠臣蔵」関係の商品が並び、11月中場~末にかけ「忠臣蔵」の赤穂義士の子孫が集まり彼らの命日に泉岳寺に参る時渡辺社長も同行するなど、「切腹最中」から始まった縁が多々あるという。
渡辺社長は「東京うまいもの大賞には大店や有名店などが並び、当店がランクインするなんて考えてもいなかった。先方から大賞をとったと聞いても1位ではなく、大賞が複数あるのだと思っていた。投票してくださった方々が小さな店だから応援してやらなければと思ってくださったのだと感じている」と話す。
営業時間は9時~20時、土曜=9時~17時。日曜・祝日定休。販売カ所は、店頭や同店のホームページと羽田空港第2ターミナルビル内。価格は178円。