虎ノ門の金刀比羅宮(港区虎ノ門1)で10月10日、年に一度の大祭が行われ、近くを通りがかる多くの人々が立ち寄ってビル街の祭りを楽しんだ。
1660年の創建当時から行われているという同祭は、五穀豊穣と商売繁盛、人々の安泰を願うもの。もともとは四国の丸亀藩主の屋敷であったため一般の立ち入りは禁じられていたが、江戸市民の要望で毎月10日に公開されるようになったのが、以降毎月の同日に行われるようになった例祭の始まりだという。毎年1月10日には「初こんぴら祭」、10月10日には「大祭」が行われる。
大祭では、献幣使(けんべいし)による奉幣の式典や、神楽「浦安の舞」の奉納が行われた。11時になると里神楽相模流「萩原正義社中」の「よつば会」「やよい会」の有志約30人による同大祭の名物「おかめ・ひょっとこ行列」が「にんば」と呼ばれる曲で踊りながら境内を練り歩き、道行く人々がユニークな踊り手の動きに次々と足を止めて見入っていた。そのほか神楽殿では「獅子舞」や「民謡踊り」、大黒天の「福徳の舞い」なども行われ、大黒天が「宝授け」として壇上から菓子を投げると歓声が上がり、人々がこぞって「宝」をつかもうと境内が熱気に包まれた。
足立区から訪れたという中村光子さんと横田満子さんは「風情があって素晴らしいと思う。本当にいいもの」とコメント。ここ数年は毎年訪れるという小石川敏子さんは「都会の中でこういうお祭りが見られるというのがいい。伝統をこれからも残していってほしい。今日は福をもらった気がする」と顔をほころばせた。アメリカから訪れ、たまたま近くを通りがかったというダーシー・ハディパテラスさんは「こういう日本の催しは大好き。街が生き生きと活気づいているのを感じる」と話し、ひょっとこや大黒天などを次々に写真に収めていた。
同社神職は「普段は周辺のオフィスで働く人たちが仕事前や後、休憩時などに立ち寄るが、大祭の時にはその他の人も大勢訪れる。社殿のすぐ脇がビルという珍しい景観も楽しんでいただければ」と話す。
「里神楽奉納」は10時、13時、15時、16時、17時、「おかめ・ひょっとこ民踊行列」は11時、14時で10月10日のみの催し。