東京都建設局は4月24日、復元工事中の「松の茶屋」を一般公開した。現場は同22日に上棟を終えたばかり。集まった建築・史跡愛好家らは、関係者の説明に終始興奮した様子を見せた。
茶屋の復元工事は、同局が2004年から続けている同庭園の修復・復元事業の一環。これまでに「潮入りの池」「内堀」の護岸や「中の橋」などの修復が完了している。同茶屋の復元にかかる施工費は約1億4,400万円。内、都が6,600万円、国が7,800万円を負担する。着工は昨年10月で、今年の秋には完成する見込み。
徳川将軍家の持ち物だった同庭園には5つの茶屋があったが、第二次世界大戦の空襲でほとんどが焼失した。現在の「中島の茶屋」は観光用として1983(昭和58)年に再建したもの。「松の茶屋」は建物の基礎部分に当たる「礎石」がそのまま残っており、宮内庁に多くの資料もあったことから比較的復元しやすく、他の茶屋に先駆けて復元に着手した。
今回の復元工事は、外観だけでなく、創建当時の材料と工法をできる限り忠実に元の姿(創建時)を再現するもの。東京都東部公園緑地事務所工事課・高遠達也さんは「全国的にも珍しい工事。滅多にない現場なので皆さんに見てほしく、一般公開を企画した」と話す。
基礎工事には現存する礎石をできる限り利用し、破損している部分は当時と同じ真鶴産の小松石で複製。さらに現代の建築基準に従い、見えない部分にコンクリート基礎を設けた。一般的に礎石などの遺構を保護する場合、盛土をした上に新たな礎石を据え、建物を建造する。同茶屋は礎石の保存状態が良好でそのまま使うことができたため、かつてと同じ高さの地盤に建物を建てることができた。これにより、池との景観のバランスを崩すことなく復元できるという。
建物は高さ約5メートルの平屋造りで、間取りは13畳と10畳の続き間、延べ床面積は63.62平方メートル。建物様式は数寄屋風書院造り、屋根はサワラ材による柿(こけら)葺きという技法を用いる。資料に倣い、天井板には希少な屋久杉材も張る。「さすがにコストがかかるので、屋久杉は10畳のみ。13畳の方は霧島杉で代用する」(工事関係者)予定。
完成後の用途は「アイデアを吟味中」。工事課長の細岡晃さんは「茶屋はゲストハウスとしての役割をしていた建物。当時の大名の茶屋遊びを体感してもらえるような、夢のある企画を考えていきたい」と笑顔を見せる。「まだ見通しは立っていないが、『汐見茶屋』『鷹の茶屋』『燕の茶屋』も順次復元していきたい」とも。
庭園の開園時間は9時~17時。入場料は一般=300円、65歳以上=150円、小学生以下無料。「松の茶屋」の内覧はできないが、囲いに掲示された資料の閲覧が可能。